あなたの狂おしいほどの深い愛情で、もう一度恋ができました
 いつもは胸元をザックリ開けたシャツ姿で色気が漏れ出しているから、どうやら社長に普段の服装は止められたみたいだ。
 ちなみにメガネは度が入っていないらしい。
 変装を()いられた、というわりには本人も楽しんでいそう。

「ていうか、さっきのは痛かった。わざとぶつかったでしょ」

 軽く頬をふくらませながら抗議をしてみた。
 ぶつかられた右肩には今でも違和感が残っていて、本気で痛かったのだ。

「ごめん! 鞄の中身をぶちまけるのが目的だったから」

「肩がはずれるかと思ったわ」

「大丈夫?!」

 恨み節のように少々大袈裟に言えば、架くんはあわてて私の右肩を大きな手で労わるように(さす)った。

 こういうところは……架くんはやさしい。
 女性には誰にでも平等にやさしくできるのは、すごい才能だと思う。
 好きな女の子にはもっと特別扱いをするのかもしれないけれど。

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