あなたの狂おしいほどの深い愛情で、もう一度恋ができました
「どちらから来られました?」

「え?」

「お住まいですよ」

「あ、ああ。えーっと……あの……」

 教えなければいけない義務はないはずだ。個人情報なのだから。
 こういうときはぼんやりと、〇〇方面とだけ答えておくのがベストかもしれない。

 頭を高速でフル回転させ、ああでもない、こうでもないと、より良い答えを導き出そうとした。
 だけど私が男性慣れしていないせいで、上手に話を逸らせることができない。

「自分の住んでる場所、忘れちゃいました?」

 多少身長が低めなこの男性は、自分が失礼な発言をしている自覚はあるのだろうか。
 顔がニヤついているので、バカにされたとしか思えない。


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