あなたの狂おしいほどの深い愛情で、もう一度恋ができました
「香坂さん、アイスティーありました? なかなか戻ってこないと心配になりますよ」

 わざとらしく作った声を出しながら、架くんが私たちに割り込んできてくれた。

「アイスティー?」

「紅茶が好きなんでしょ? さっきそう言ってましたよね?」

 そんな会話は一切していないが、これは架くんが出してくれた助け舟だとすぐにわかった。話を合わせなくてはいけない。

「僕も冷たいレモンティーにしようかな。香坂さんもそうします?」

「……はい。それで大丈夫です」

「仲良く同じものを飲んで語り合いましょうよ」

 今日の架くんはかなりのオタク路線で行くつもりらしい。
 演じるのを楽しんでいるようで、元々はこうだったのかもと思うほど、ネバっこい喋り方が板についている。

 彼が昔はナンバーワンホストだったと言っても、誰も信じないかもしれない。
 この出で立ちと雰囲気では、他の女性たちは寄ってこないだろう。架くんの作戦通りだ。

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