あなたの狂おしいほどの深い愛情で、もう一度恋ができました
 オタクキャラの架くんが私に親しそうに話しかけているのを目にし、先ほどの失礼な男性はいつの間にかどこかへ消えてしまった。

「はぁ……行ったな。葉月さん、声かけられすぎ」

 架くんが私にしかわからないような音量で囁く。それは聞き慣れたいつもの声だ。
 そんな注意をされても、向こうから勝手に話しかけてくるのだから、この場合私に過失はないと思う。

 でも架くんが助け舟を出してくれなかったら、今もおろおろしたままだっただろう。
 少なくとも潜入の仕事は遂行できなくなっていたかもしれない。

「……ごめん」

 ここには仕事をしに来たのだ。それをあらためて自覚したら、自然と謝罪の言葉が口から出ていた。

「葉月さんはかわいいから危ない。だから俺から離れないように。わかった?」

「……はい」

 私はかわいいと称されるには程遠いけれど、それでもやはり、男性からそう言われてうれしい自分がいた。
 私に“女”の部分がまだ残っている証拠だろうか。

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