あなたの狂おしいほどの深い愛情で、もう一度恋ができました
「……あ、初めてだ」

「なにが?」

「女の子と手を繋ごうとして断られたのは、人生で初」

 そうかもしれない、と納得してしまった。
 架くんならば、自分から手を差し出さなくても女の子から繋ぎに来たりするのだろう。

 架くんと私は、本当に間逆だな。

 自然と女の子と仲良くなれていた架くんと、常に男性を遠ざけていた私。

 私は手も繋がなかったし、心も繋がなかったけれど……架くんは心も誰かと繋いだのだろうか。

 そんなことを考えていると、暗闇なのに不意に架くんと視線が交錯する。
 だが心を読まれるのが嫌で、私からフイッと逸らせてしまった。


 微妙な空気が漂う中、ついに私たちのスタートの順番が来た。
 行動自体はいたって単純で、廃墟の中を決められた順路に沿って見てまわるだけだ。

 大丈夫。怖くない。自分の靴先だけを見ていればいい。ほかは何も見るな。
 気にしなければ大丈夫……。

< 74 / 273 >

この作品をシェア

pagetop