あなたの狂おしいほどの深い愛情で、もう一度恋ができました
 もうこうなると自己暗示しかなく、念仏のように心の中で何度も唱えた。
 そんな中、隣にいる架くんの顔がおもむろに私のほうへ近づいて来る。

「意地っ張りな人は、ここに置いて行こうかなぁ」

 私の耳元でそれだけをつぶやくと、架くんはまた元の位置に顔を戻した。
 私が反論する間もなく、架くんがスタスタと先に歩き出して行ってしまう。

「ちょ、ちょっと待ってよ!!」

 置いていかれてなるものか。こちらは懐中電灯を持っていないから、灯りがまったくなくて真っ暗だ。
 小走りで駆け寄って追いつき、架くんの真後ろにピタリと陣取った。

 これで周りを見ないで歩けばやりすごせそう。
 そう思った瞬間、ギギギギギ……という謎の音を耳にし、一気に背中がゾクゾクとした。

「今の、何の音?!」

 私は恐怖心から咄嗟にあたりを見回してしまい、自分の靴先だけを見続けることに失敗した。

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