あなたの狂おしいほどの深い愛情で、もう一度恋ができました
 架くんが壁の隅に懐中電灯を当てた。
 その場所にはたしかに大きな蜘蛛の巣がゆらゆらと揺れていた。

「いや、違う。ああいう感じじゃなかった。あれじゃない」

「とにかく先に進もう。ずっとここに居続けるほうが葉月さんには恐怖だろ?」

「ま、待ってよ!」

 先を急ごうとする架くんに遅れを取らないように追う。
 私はなにか見間違ったのだ。おかしなものは見ていないはずだから大丈夫だと自分に言い聞かせた。

「よし。ゲット」

「……へ?」

 この場にそぐわない架くんの明るい声と共に、私の右手が少し引き上げられる。

「ちょ、ちょっと!」

 気がつけば私は架くんと手を繋いでいた。あっという間に指を絡めてがっちりと捕らえられている。

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