あなたの狂おしいほどの深い愛情で、もう一度恋ができました
「先に繋いできたのは葉月さんのほうだけど?」

「えぇ?!」

「俺の手にしがみついてきただろ?」

 それは無意識での行動だった。
 置いてきぼりになりたくなくて、不覚にも架くんの手を自分からつかんでしまったらしい。

「放す?」

「……」

「はは。冗談だよ。かわいいなぁ」

 架くんにからかわれようと、こうなってしまえば今は放せない。
 この世のものではないものが私のすぐそばにいるかもしれないという恐怖心が強いため、頼らざるをえない状況だ。

 それに、架くんの握力によってガッチリと繋がれている。
 放す? なんて聞いてくるわりに、彼もそんな気はまったくなさそう。

「もうすぐ出口だ。良かったね、幽霊出なくて」

 相変わらずノーテンキな声を出す架くんに、若干バカにされている感じは否めないけれど、幽霊が出なくてホッとした。
 もしはっきりと見てしまったら、私はどうなっていたかわからない。

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