素顔で最高の恋をしよう
 ホスト時代もこうして女の子を喜ばせていたのだろうか。彼みたいなイケメンが巧みなトークを織り交ぜれば最強だ。

「俺、いつの間にか自分をよく見せようと必死だったのかも」

「……え?」

「ほら、女の子がデートのときに張り切りすぎて厚化粧する、みたいな感じ?」

 いったい何の例えなのか私にはわからなかった。
 だいたい、架くんは元々綺麗な顔をしているのだから、自分をよく見せようだなどとそんな努力は必要ない。私にそうする意味もない。

「ゴテゴテにぶ厚い化粧をしても、笑えるだけだよな。人間同士、真剣に付き合うなら取り繕ったりせずに、ありのままの素顔が一番なのに」

 架くんの言葉が私の胸にもチクリと針を刺した。私自身はどうだろうか。
 もちろん同性同士ならば、気の合う友達とはありのままでいられている自信はある。だけど異性となると……私にはそれは難しい。

 いつも愛想笑いの笑みを顔に貼り付けて、自分から“壁”を作っている自覚はある。
 それは上辺だけの付き合いで、ありのままの素顔を見せるなんて無理だ。

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