私のダーリン
押し寄せる不安

和香

ドアをノックする音に。

振り向いた。

マネージャーの村田さんと一緒に入ってくる
晴人。

「井上、あの時も、朝まで2人でさ。」
「そんな事もあったなぁ」
「私、本気だったんだけど。」
「そうか?ふざけてただけだろ?」

晴人‥。マネージャーと何かあるの?
そういえば、本店にいた頃
マネージャーには、恋人がいたと。
美男美女と‥。

嫌だ。その人って晴人なの?
胸の奥をぎゅーっと握られたように
痛む。
 
私は、気づかないフリをして、パソコンの
画面を落とした。
ガタン椅子が棚にあたった。
「おっ!榊、居たのか?」
「‥。はい、井上主任。」
「あら、榊さん、申し込みのお二人決まった?お二人に、確認のため
早めに連絡してね。」
「‥はい、」

マネージャーは、晴人の肩に手を置き
「ねぇ、それでね。うふふ、」
柔らかな笑顔を見せる晴人。
この場から早く‥。
ファアルを手に足速に廊下に出た。

今なら、松中の気持ち、痛いほどわかる
そうだよね。
苦しいよね。
不安だよね。
見たくない光景。


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