傷む彼女と、痛まない僕。
『父親が母親に手を上げた。 祖父母にも危害を加えようとした』
なんであの時、吉野さんが話をしてくれた時に気付かなかったのだろう。
母親だけでなく、祖父母にまで暴力を振るおうとしたならば、吉野さんだって害を加えられていても不思議じゃなかったのに。
『女子には週1で具合の悪くなる週がありますからね』
吉野さんが体育を見学していた理由は、父親の暴力が原因で身体を動かす事が辛かったからじゃないだろうか。
『ワタシ、80キロまで担げるから』
吉野さんは、あんな身体で僕をおぶって運んでくれたの??
・・・腸が煮えくり返るとは、この事を言うのだろうか。
この怒りは何なんだろうか。
何にも気付けなかった自分のふがいなさへの憤り。
そして、ただただあの男が憎い。