傷む彼女と、痛まない僕。
「うわぁぁぁぁああああああ!!!」
持っていた石を振り上げ、窓ガラスに向かって投げようとした時、僕に気付いた男が窓を開け、僕の胸倉を掴むと家の中に引きずり込んだ。
そんな僕を、困った様な、悔しそうな、涙を溜めた目で吉野さんが睨んだ。
「誰だ、オマエ。 他人の家の中庭に勝手に入って何騒いでんだ、くそガキ。 不法侵入で警察に突き出すぞ」
僕を吊るし上げる様に、僕の胸倉を掴んだまま、今にも殴りかかりそうな男は、この家の住人らしい。 この人は、やっぱり吉野さんの父親に間違いない。
「是非警察の方に来て頂きましょうよ。 暴行を受けて大怪我している少女がいるので保護してもらいましょう」
怯む事なく吉野さんの父親に言い返す。 だって僕は殴られたところで痛くも痒くもない。 怪我をしたって構わない。 吉野さんを助け出せるのならば。 吉野さんを守れるのならば。