傷む彼女と、痛まない僕。

 「言い間違えただけじゃん。 フェイダウェイなんて言葉聞いたの、人生で今日が初めてだったんだもん」

 『しょうがないじゃん』と開き直る吉野さん。 小山くんの『オレさすが』の件は聞き流した様子。

 「・・・スルーしやがった。 つーか、聞いたって??」

 小山くんは、ドヤ話の流されっぷりに少し恥ずかしがりながら、吉野さんの隣に座っていた僕をチラ見した。

 「そう。 北川くんだよ。 北川くん、バスケ好きで凄く詳しいんだよ。 小山、北川くんにお礼言いなよ。 北川くんのおかげで点決められたんだから」

 「イヤイヤイヤイヤ。 好きなだけで、詳しいわけでは・・・」

 何故か小山くんにお礼を言わそうとする上に、オレを謎にバスケ詳しい人扱いする吉野さんを、慌てて訂正する。
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