傷む彼女と、痛まない僕。
「・・・なかなか残酷な事するんだね」
アリがあまりにも可哀想すぎて、吉野さんに声をかけ止めさせようと近づく。
「虫って痛点ないらしいよ。 知ってた?? どうせこのアリたちなんかさ、女王アリの為にあくせく働かされてるだけなんだよ。 だったら、殺してあげた方が親切じゃん。 痛みもなく死ねるんだし。 これはワタシの善意。 ワタシは善意の殺し屋さん」
吉野さんが、さっき殺したアリの上に砂を被せた。 おそらく、お墓のつもりなのだろう。
「親切じゃないでしょ。 働きアリが女王アリのエサを運ぶのは習性で、嫌々やってるワケじゃないんだから。 吉野さんの主観で勝手に殺すのはいかかがなものかと思う」
「習性だったら、喜んでやってるわけでもないでしょ」
吉野さんは、悪びれる素振りもなく僕に言い返してきた。