傷む彼女と、痛まない僕。

 「確かに北川くんは病気持ちだけどさ、病弱なわけじゃないじゃん。 しかも北川くん、バカじゃないじゃん。 頭いいんでしょ?? 志望学部から言って。 『これをしたら危ない』とか『これは身体に負担がかかる』とか、自分でちゃんと判断出来るでしょ?? 無理な事は他のマネージャーに頼めばイイじゃん。 代わりに自分の出来る事をすれば、その頼み事だってチャラになるしさ。 迷惑なわけないじゃん。 むしろマネージャーなんだから、プレーヤーのお世話係でしょ。 迷惑かけられる側じゃん」

 『考えすぎ。 遠慮しすぎ』と、僕に呆れた視線を向ける吉野さん。

 〔北川くんは病気だけど、病弱なわけじゃない〕

 吉野さんの言葉にハッとした。

 確かに僕は、自分を弱い病人だと思っていた節がある。 健康体の人と比べれば、出来ない事も多いけれど、何も出来ないわけじゃない。 というか、出来る事だってたくさんある事を忘れていた様な気がする。 いつもいつも病気を理由に諦めて逃げていた様な気がする。

 
 「・・・僕、別に頭なんか良くないよ。 でも僕・・・・・・バスケ部に入りたい。 小山くん、口利いてくれる??」

 「もちろんでしょ!!」

 小山くんがニィと笑って僕の肩を抱いた。

 独断でバスケ部に入部して、後で親や担当医に叱られるかもな。

 でも、いいや。 そんなのどうでもいいや。 僕はバスケ部に入りたい。
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