傷む彼女と、痛まない僕。
 
 詮索されるのを嫌う吉野さんの性格を知っている小山くんが、しぶしぶ着替えをしに僕の席から離れると、吉野さんは座っていた椅子を元の席に戻し、『体育館行こっか』と僕を誘った。

 体育館に移動し、今日もステージに並んで座る。

 続々と生徒たちが集まって来て、体育の授業が始まった。

 その様子を2人で眺める。


 「・・・結婚願望がない女子が増えてるって本当なんだね」

 吉野さんのさっきの言葉が気になって、遠まわしに話を振ってみる。

 「・・・小山ってさ、名前通りの性格だよね。 親の期待通りに育ってるよね」

 が、すり返られてしまった。

 「正義と書いてマサヨシ。 ・・・確かに」

 小山くんは、『正義』以外の名前は当てはまらないくらい正義な人だ。

 「自分が不正解な人間だという自覚はちゃんとあるんだけどさ、小山といると、それをダイレクトに感じるから、たまにしんどい」

 吉野さんが、男子と戯れている小山くんをチラっと見た。
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