傷む彼女と、痛まない僕。
「吉野さん、不正解なの??」
「北川くんは、結婚願望あるの??」
吉野さんは、僕の質問には全然答えてくれなくて、気まぐれに話を戻した。
「・・・病気じゃなかったら、結婚したいって思ってたかもね。 だけど、やっぱり相手の事を思うとこんな自分じゃ申し訳なくて。 ・・・って事を小山くんに話したら『迷惑かどうかは北川じゃなくて相手が決める事』って怒られた」
「さすが『正義』」
吉野さんが困った顔をしながら笑った。
「・・・ワタシもね、相手に申し訳なくて結婚出来ない。 結婚したらさ、旦那さんはきっと『子供が欲しい』って思うでしょ?? だけどワタシは産めない。 可哀想で。 ・・・生きるってしんどいよ。 苦しいよ。 分かってるのに産むなんて出来ない。 ワタシは『この世は美しい。 生命は素晴らしい』なんて思ってもいない事をわが子に言えない。 そもそも、後世に繋げたい命がない。 ワタシ、一人っ子で本当に良かったと思ってる。 ワタシでこの血筋は立ち消せる。 ・・・なんて、小山にはとても話せないよね」
吉野さんが、笑いながらも溜息を吐いた。