傷む彼女と、痛まない僕。
吉野さんの言う『恥』とは何なのだろう。 コンプレックス?? でも、コンプレックスで『恋愛も結婚も出産もしない』なんて決意するだろうか?? 『死にたい』なんて僕の病気を羨ましがったりするだろうか。
どこか切羽詰った様子の吉野さんが心配だ。 だって、
「・・・大丈夫?? あまりにも絶望的な言葉ばっかりだから」
自称プライド高い女の吉野さんが『大丈夫じゃない』などと寄りかかって来る事はないだろうと思いながらも、声を掛ける。
「・・・『絶望』なんて言葉発してる人間ってさ、まだ絶望の淵にいないよね。 本当に絶望していたら死んでるよ、きっと。 思い通りになんか行かないって分かってるのに、それでもいやらしく変な期待して死ねないんだよ。 結局、期待なんて裏切られるのにね。 で、『何で自分ばっかり』って嘆く。 その後また凝りもせずに何かに期待しては、打ち砕かれる。 の繰り返し。 それが、ワタシ」
『死にたいけど、怖くて死ねない』と言っていた吉野さんは、『生きたいけれど、生きるのが辛いから死にたくて、でも辛くなくなれば生きたい人』で、本当は死にたくないんだ。
僕らは、恋愛や結婚に夢がないからしないんじゃないんだ。
希望しかないから、しないんだ。
希望に失望したくないんだ。
吉野さんの気持ちが、少しだけ分かった気がした。