傷む彼女と、痛まない僕。

 「・・・バイトの時間までゆっくり寝てたかったのに。 休みの日にまで早起きして応援しに行ってやるんだから、絶対勝ってよね!!お2人さん!!」

 吉野さんが、小山くんと僕の肩を『パシン』と叩いた。
  
 「・・・僕は試合に出るわけじゃないし」

 痛みなんか感じもしていないが、僕を人間らしく育てたかった親に『どこかにぶつかったり、どこかを打ち付けたりしたら、その部分を擦って労わってあげるんだよ』と小さい頃から言われ刷り込まれていた為、何となく叩かれた肩を摩ると、

 「そんなに強く叩いてないでしょうよ。 そんなに痛くないでしょうよ。 てか、全然痛くないだろ、北川くん!!」

 吉野さんが、今度は僕の腕に軽くパンチをした。 ので、

 「いたたたたー。 折れたかも。 骨、粉砕したかも」

 負けずに更にふざけてみる。

 「嘘吐け。」

 「確かに僕は痛みは感じないけど、危害を加えられればみんなと同じで骨は折れるんです」

 「危害て。」

 『ふっ』吉野さんと2人で吹き出して笑っていると、小山くんが羨ましそうな、面白くなさそうな視線を僕に向けているのに気付いた。
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