傷む彼女と、痛まない僕。
 
 あ、やばいやばい。 『ごめんよ、小山くん』と心の中で小山くんに謝りながら、1歩後ろに下がって吉野さんと距離を置いてみた。

 「てゆーか北川くん。 『僕は試合に出るわけじゃないし』って、何他人事みたいに言ってんの?? アンタ、マネージャーでしょうが。 アンタのサポートで勝たせなさいよ。 ワタシ明日早起きするんだから!!」

 僕が1歩下がった分を、僕を『アンタ』呼ばわりしながら詰め寄る吉野さん。

 吉野さんは、よっぽど早起きが苦痛らしい。

 「・・・精一杯サポートさせていただきます」

 「当たり前じゃ、ボケ」

 僕が傷みを感じない事をいい事に、僕にど突いてくる吉野さん。を、何とも言えない表情で見ている小山くん。

 吉野さんお願い。 小山くんにもど突いてあげて。 痛みを知っている分、彼は凄く良いリアクションをしてくれるよ。 アナタの事、大好きなんですよ。
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