傷む彼女と、痛まない僕。
病院に着き、主治医の診察を受けると、僕の病名は風邪ではなく『急性胃腸炎』だった。
僕の場合、胃よりも腸がやられていたので、吐き気はなく下痢が酷かったらしい。
脱水が凄まじかった為、点滴2本の5時間コース。
点滴中、ぐっすり寝てしまい、その間に吉野さんはバイトに行ってしまった様子。
バイト、間に合わなかったかもなぁ。 来週学校で謝らなきゃ。
点滴が終わり、待合室に行くと、精算を済ませた両親がベンチに腰を掛けて僕を待っていた。
僕を見つけて駆け寄る両親。
「胃腸炎なんて・・・ストレスじゃないの?? 部活、辞めた方が良いんじゃないの??」
開口一番の母親の言葉。 予想通り。
「部活じゃない。 僕、心当たりあるんだよね。 おとといの弁当に入ってた唐揚げ、ちょっと火通ってなかったんだよね」
主治医に病名を聞いた時、すぐ原因にピンときた。 あの日、唐揚げを口に入れた瞬間に『これ、ちょっとヤバイかも』と思った事を覚えていたから。
「だったら吐き出せば良かったじゃない!!」
「無理でしょ。 みんながいる教室で。 でもまぁ、次からはトイレでそうするわ。 つーか、今度からは揚げ時間長めでお願いします」
『ごめんなさい』しょんぼりする母の隣で、顔を顰める父と目が合った。