傷む彼女と、痛まない僕。



 担任が教室に入ってきて、朝のSHRが始まった。

 担任が、いつも通り出席を確認して、形式的な報告事項を連絡する。

 『あー。 1時間目体育か』なんて、机に頬杖をつきながら担任の話を聞き流していると、

 「吉野、オマエだけだぞ。 進路希望出してないの。 早く提出しろ」

 担任の口から吉野さんの名前が出て、上の空だった意識が戻ってきた。

 「・・・・・・はい」

 適当というか、溜息混じりに気のない返事をする吉野さん。

 「あれ?? 吉野って看護系の大学に行くって言ってなかったっけ?? 1年の時」

 吉野さんの前の席の小山くんがくるっと振り返り、吉野さんの顔を覗いた。

 小山くんは、去年も吉野さんと同じクラスだったのだろう。
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