重ねた嘘とサヨナラを
すぐに逸らそうとする自分を叱咤して、じっと見つめる。







どれほど、時間が経っただろうか。



幾度も背を冷や汗が伝って。


長い長い時間が経ったように感じたけれど。

実際はほんの僅かだったのかもしれない。

それまで、無表情でじっと私を睨みつけていた土方さんが。

「…………ふっ」

突然、小さく笑った。

ぴん、と張っていた空気が緩む。

やっと息がつけた。

空気が喉を通って、肺に入ってくる。

「……女中の仕事は、主に洗濯、掃除、料理などの家事仕事だ。
見ての通り、ここは男がほとんどだ。
まあ、いろいろあるだろうが頑張れよ」

「え?」

さっきまで、あんなに殺気のこもった目で私を見ていた人が、頑張れなんていうなんて。

「肝の据わった女は嫌いじゃねぇ」

なんと言うか、笑うと一気に印象の変わる人だ。

黙っていれば、触れれば切れそうなほど鋭い雰囲気を醸し出しているのに、笑った途端、ふわりと柔らかくなる。

「……ありがとう、ございます」

不思議な男だ。

「ならば決まりだ!悪いけど、早速晩飯を作ってくれるか?」

嬉しいそうに笑う近藤さんに、私は薄く笑った。

「はい」






ゆっくり、ゆっくりと溶けてゆく。


不安とか、恐れとか、怯えとか。


溶けて、ドロリと胸の底に溜まるのは。


彼らを騙す罪悪感。


汚い濁りが、胸の奥に溜まる。


それでも、私は………。


嘘を吐くの。


高杉さん。


胸で小さく呟く。


貴方がそばにいないだけで、私は私でいられなくなりそう。















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