100%初恋
「何考えてんの?」
耳に届いた声にハッと目を開いた。そうだ、健太とキスしてたんだ。
「俺とキスしてるのに、違うこと考えるなんて余裕だな」
「……健太と一緒にいれて、しあわせだなって思ってたのよ」
「嘘つけ」
「ふふ、嘘じゃないわよ。王子様は迎えに来なかったけど、凛音ちゃんはしあわせになりました、
ってね」
「俺は王子様じゃないのか?」
「健太は健太だよ。王子様じゃない」
唇を触れ合わせたまま喋るからくすぐったい。健太の首に回していた腕に力を入れて、また唇の距離をゼロにした。すぐに深くなるくちづけ。どちらが立てているのか分からない水音が、次第に大きいなる。熱くなった舌を追いつ追われつしていると、Tシャツの裾を捲り上げて、健太の手が中に忍び込んで来て……
「んんーっ!」
首を振って拒絶を伝えながら、右手で健太の後頭部を叩いた。
「イテッ。何すんだよ」
「何すんだじゃないわよ。今日はうちの親の結婚記念日のお祝いをするから、早く帰らなきゃいけないって言ったでしょ!」
「それってマジだったのか」
「マジです。本当の結婚記念日は来週だけど、結婚式と重なっちゃったから、前倒しで今日するのよ」
捲り上げられたTシャツを直しながら健太を見ると、目を丸くしていた。
「スゲーな、凛音の家。うちはそんなことしたことないぞ。今年で何年目だ?」
「20年目……うちは変わってるから」
「んー、そうか?このご時世じゃ、珍しい家族じゃないだろ。それにしてもマメだなぁ」
「健太も来年からメンツに入るんだよ」
「マジかよ……」
「マジです。家族なんだから」
何とも言えない顔をしてる健太に、思わず噴き出してしまった。つられて健太も笑う。こんな些細なことで笑い合えることが、しあわせだなって感じる。
「しかしヒロ先生と凛音のかーちゃんが、義理の親になるとは思わなかったなぁ」
「わたしだって、まさか健太と結婚するとは思ってなかったよ」
健太とは、同じ会社に同期入社で、新人研修のグループも同じだったので親しくなった。研修後に配属されたのも同じ部署で、長い付き合いになりそうだねと笑い合ったのが5年前。仕事をしてても、同期会をしてても、自然と2人でいることが多くなって、告白めいた言葉もないまま付き合うようになっていた。そして半年前の、去年の年末にプロポーズされて今に至る。入社当時に話した長い付き合いが、本当に長い、一生ものの付き合いになるわけ。
健太とわたしの付き合いは、それだけじゃない。どうやら、健太とは同じ保育園だった、らしい。
健太はすぐにわたしのことを思い出したようだが、わたしは健太のことを全く覚えていなかった。そもそも保育園時代ことを、あまり覚えてないんだけど。
覚えているのは、卒園式の日に、わたしのあたまに大きな手を置いて、「また会えるよ」と言ったあの人のことだけ。20年たった今でも、それだけは鮮明に思い出せる。
過去に想いを馳せていると、不意に頭を掴まれ、ぐしゃぐしゃと髪をかき混ぜられた。あの人とは違う手。手の主を見ると、突然黙り込んでしまったわたしを、心配そうに、だけど温かく見つめている目と視線がぶつかった。
わたしが微笑むと、健太も笑う。その笑顔を見て、またわたしが笑う。こんなふうに、2人で連鎖させていることが、しあわせだと思う。
未来の、といっても1週間後、旦那様になる健太の胸に抱きついた。
耳に届いた声にハッと目を開いた。そうだ、健太とキスしてたんだ。
「俺とキスしてるのに、違うこと考えるなんて余裕だな」
「……健太と一緒にいれて、しあわせだなって思ってたのよ」
「嘘つけ」
「ふふ、嘘じゃないわよ。王子様は迎えに来なかったけど、凛音ちゃんはしあわせになりました、
ってね」
「俺は王子様じゃないのか?」
「健太は健太だよ。王子様じゃない」
唇を触れ合わせたまま喋るからくすぐったい。健太の首に回していた腕に力を入れて、また唇の距離をゼロにした。すぐに深くなるくちづけ。どちらが立てているのか分からない水音が、次第に大きいなる。熱くなった舌を追いつ追われつしていると、Tシャツの裾を捲り上げて、健太の手が中に忍び込んで来て……
「んんーっ!」
首を振って拒絶を伝えながら、右手で健太の後頭部を叩いた。
「イテッ。何すんだよ」
「何すんだじゃないわよ。今日はうちの親の結婚記念日のお祝いをするから、早く帰らなきゃいけないって言ったでしょ!」
「それってマジだったのか」
「マジです。本当の結婚記念日は来週だけど、結婚式と重なっちゃったから、前倒しで今日するのよ」
捲り上げられたTシャツを直しながら健太を見ると、目を丸くしていた。
「スゲーな、凛音の家。うちはそんなことしたことないぞ。今年で何年目だ?」
「20年目……うちは変わってるから」
「んー、そうか?このご時世じゃ、珍しい家族じゃないだろ。それにしてもマメだなぁ」
「健太も来年からメンツに入るんだよ」
「マジかよ……」
「マジです。家族なんだから」
何とも言えない顔をしてる健太に、思わず噴き出してしまった。つられて健太も笑う。こんな些細なことで笑い合えることが、しあわせだなって感じる。
「しかしヒロ先生と凛音のかーちゃんが、義理の親になるとは思わなかったなぁ」
「わたしだって、まさか健太と結婚するとは思ってなかったよ」
健太とは、同じ会社に同期入社で、新人研修のグループも同じだったので親しくなった。研修後に配属されたのも同じ部署で、長い付き合いになりそうだねと笑い合ったのが5年前。仕事をしてても、同期会をしてても、自然と2人でいることが多くなって、告白めいた言葉もないまま付き合うようになっていた。そして半年前の、去年の年末にプロポーズされて今に至る。入社当時に話した長い付き合いが、本当に長い、一生ものの付き合いになるわけ。
健太とわたしの付き合いは、それだけじゃない。どうやら、健太とは同じ保育園だった、らしい。
健太はすぐにわたしのことを思い出したようだが、わたしは健太のことを全く覚えていなかった。そもそも保育園時代ことを、あまり覚えてないんだけど。
覚えているのは、卒園式の日に、わたしのあたまに大きな手を置いて、「また会えるよ」と言ったあの人のことだけ。20年たった今でも、それだけは鮮明に思い出せる。
過去に想いを馳せていると、不意に頭を掴まれ、ぐしゃぐしゃと髪をかき混ぜられた。あの人とは違う手。手の主を見ると、突然黙り込んでしまったわたしを、心配そうに、だけど温かく見つめている目と視線がぶつかった。
わたしが微笑むと、健太も笑う。その笑顔を見て、またわたしが笑う。こんなふうに、2人で連鎖させていることが、しあわせだと思う。
未来の、といっても1週間後、旦那様になる健太の胸に抱きついた。