この勇気をくれたのは君だったよ
『愛菜せんぱーい!』
先輩と別れ、後輩君と待ち合わせている音楽準備室に行くと、待ちわびていた後輩君が飛びついてきた。
『愛菜先輩、遅いっすよー!
俺、先輩が来るの待ちきれなくて…』
後輩君の言葉を遮り、私は後輩君の唇に自分の唇を合わせた。
ほら、一瞬で黙ってくれる。
なかなか黙らない男を黙らせるのはこれが一番いい方法だと思う。
『先輩、誘ってます?』
唇が離れたと同時に、後輩君はニヤッと笑って、そう問いかけてきた。
『どう思った?』
『誘うのは男の仕事だと思いますよ、先輩?』
後輩君はその場に私を押し倒して、私の上に跨ってくる。
若いっていいな…
こんなに簡単に事を始められて。
全てのことが終えても後輩君の甘いキスはずっと降り注ぐ。
『愛菜先輩、今度いつします?』
キスの最中に問いかけられるも私は黙る。
『先輩、今日満足できませんでした?
もしそうなら俺、もう一度…』
今度は後輩君の唇を私は人差し指を立てて塞ぐ。
『次はないよ?
一度誘われたから、一度試してみただけ。
後輩って可愛い存在でしょ?
だから邪険に扱えなかっただけ。
一度、君のご要望は聞き入れました、だから次はない』
『何それ?先輩、俺で遊んだだけ?』
後輩君の顔が歪んでいくのが見ていて分かる。
『そうだよ?
私、遊ぶくらいの関係がちょうどいいの。
君も私のこと、本気って言うわけじゃなかったでしょ?』