秘色色(ひそくいろ)クーデター

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 太陽は真っ白に輝いていて、空にはそれを遮るものはなにも浮かんでいなかった。快晴、と言いたいところだけれど、晴れているのにどこかくすんだ薄い水色の空。

 ジリジリとアスファルトを焦がすような日差しの中、玄関で小さく深呼吸してから「行ってきます!」と両親に声を出した。


「……行ってらっしゃい」


 珍しく両親ともに私を玄関まで見送ってきて、こんな日にそんなことをされて胸が傷む。心なし、私のしようとしていることを悟っているような、そんな気さえする。

 ごめんね。
 多分、いや、絶対。また呼びだされる。クーデターの首謀者として、きっと問題になってしまうだろう。

 ごめんね。
 心のなかでもう一度両親に謝って、空を仰いだ。


「クーデター日和、なのかなあ……」


 雨のほうがそれっぽかったかもしれないけど、これはこれでいいかもしれない。青いし。青い空のほうが青春っぽい。シャツの色と似てるし。青鼠色。


 今日は、1学期最終日。テスト休み明けの終業式。
 つまり、私たちが、クーデターを起こす日。


 あれから私たちは毎日学校に集まった。
 残された日はほんの数日だったけれど、当初よりもやるべきことが決まっていた上に”伝えること”だけを考えたからか、昨日までに準備はなんとか無事に終わった。

 役割分担や細かな打ち合わせ。

 結局、来栖先輩と会長も一緒になって話をしてくれた。


 とうとう、当日。昨日の夜から胸がずっと激しく伸縮していて、よく眠れなかった。今日、この日が終われば私たちはきっといろんなことが変わってしまうだろう。


 目を瞑って深呼吸をしてから空をもう一度仰いで、脚を前に出す。



 我々は、反乱軍。
 今日、この日、私たちは学校に、みんなに、改めて宣戦布告をするとともに、終わらない反乱を始めるんだ。


 制服を身にまとう、反乱軍。窮屈な制服。だけど、これが私たちの戦闘服だった。今までも、これからも。


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