秘色色(ひそくいろ)クーデター
「お前よかったのか?」
意味がよくわからなくて、首を傾げながら「なにが?」と聞く。
「お前、仲間になるつもりなかったんじゃねえの?」
ああ、そのことか。
「んー……まあ、正直言えばそうなんだけど。っていうか、勇気がなかった、だけっていうか」
イマイチ現実味がない、というのもあるからうまく返事ができない。
気になってたし、仲間になると言ったことを後悔しているつもりはない。だけど"やってやるぞー!"なんていう気合もない。
でも、変化を求めている。
「大和くん、は……」
そう言いかけて、どう言葉にすればいいのかわからず詰まってしまった。
どうして、彼らの呼びかけに応えたんだろう。でも、それを聞いてもいいのだろうかと。
本気だというのを感じるからこそ、踏み入るのが躊躇われるのかもしれない。
私は、そこまでの気持ちを抱いていないような気がするから。
だって、私は今、それなりに上手く立ちまわっているもの。
「なんで、放送室ってわかったの?」
聞きたかった言葉を飲み込んで違う質問を投げかけると、彼は「わかるだろ」と呆れたように答えた。
「放送委員って、この学校の底辺の集まりだからな」
「……は?」
「めんどくさい委員会なんて内部なら誰でも知ってて誰もやりたがらねえ。1年は外部組が入ってる場合もあるけど、大体が押し付けられてんだよ。いじめられてる奴がいじめてる奴に無理やりさせられるんだ。それに、放送ジャックなんて放送委員でない限り難しい。おまけにあの内容。誰でもわかる」
ほほう、と思わずため息をこぼしてしまった。
そんなにわかるなんて大和くんくらいだろう。
現に浜岸先輩も、あの女の先輩。名前は、蒔田、だったかな?あの先輩も探しまわったって言ってた。
いじめている方だから、彼らがそんなことをするとは思いつかないのかもしれない。
「あの男が来たのは予想外だったけど」
「浜岸先輩?」
「あんなヤツがなにしたいんだか」
わざわざ放送室を探しまわった先輩たち。
あの放送になにかを感じ、集ったのは間違いなく事実だ。私なんかよりもよっぽど、本気だ。
「明日……」
私は行ってもいいのかな。
「なに?」
「なんでもない」
そんなくだらないことを大和くんに聞いてどうするんだ。
聞きかけた自分を心のなかで叱咤して、奥歯をぐっと噛んだ。