秘色色(ひそくいろ)クーデター
っていうか。
あとからやってきて会議を勝手に始めて仕切るっていうのはどうなんだろう。
さっきまで堂々としていた鷲尾先輩が、どんどん小さく見えてきてしまう。ここは、鷲尾先輩が仕切るべきなんじゃないの?
こんなの、今までと変わらないじゃない。
縮こまって、おとなしく過ごしているだけ。どんどん存在感が消えていくのがわかる。
他の先輩だって同じだ。さっきまでもう少し話してくれていたのに、今は殆ど無言で、机に視線を落としたまま。
やろうとしていることがあるはずなのに、この場ですらそれができないなんて、おかしい。
「じゃ、みんながその終業式に伝えたいことをひとりずつ言っていこうか」
「あ、の!」
思わず言葉を遮ってしまって、みんなの視線が私に集中した。
あ、と思ったときには既にもう遅い。
「なに? えーっと、名前なんだっけ?」
「い、1年の、相田です」
「相田さんか。で、なに?」
えーっと。なにを言いたんだっけ。
にっこりと微笑まれて、その視線から逃げるように机を見つめた。
おかしい。違う。そう思っただけ。でも、どうしよう。こんなことを1年の私が口にしてもいいんだろうか。
——『なんでそんな偉そうなの?』
いや、こんな険のある言い方じゃだめだ。
ただ、間違っていると思っただけ。おかしいと思ったから、口にしただけ。行動しただけ。
ど、どう言えばいいだろう。
「わ、たし……は。鷲尾先輩の……意見を聞きたい、です」
ぎゅっと拳を作ってそう告げた。
「え?」
「その、一番最初に、行動を起こした鷲尾先輩の口から……聞きたいな、て」
「あーそっか。じゃあ、鷲尾くん、ってきみだよね? なんかある?」
多分私の言っている意味を、会長はあまり理解してないみたい。だけど、これ以上、うまく気持ちを伝えることが出来なくて、黙って鷲尾先輩を見つめた。
「ぼ、僕? ……いや、その」
「なにもない? おれがおかしかったら言ってくれていいんだよ?」
「……いや、ない、です」
鷲尾先輩がさっと会長から目をそらして、ちらりと私を見てから気まずそうに視線を外した。
その瞬間。
恥ずかしい——そう思った。