秘色色(ひそくいろ)クーデター
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いつものように朝起きて1階に降りると、お父さんがテレビを見ながら朝ごはんを食べていた。
そういえば……今日は土曜日だっけ。
休みに入ってから曜日感覚がなくなってた。
「お、おはよう、輝」
「はよ。お父さんがいるからびっくりした」
そばのソファに座ってから、キッチンにいるお母さんにも声をかけて一緒にテレビを眺めた。今日もワイドショーが流れている。
最近有名な実力派俳優と言われるかっこいい男の人が、そこそこかわいいだけのタレントと熱愛だのなんだのと騒がれてる。
この前騒がれていたネット炎上とやらは、どこに消えたのだろう。
『売名行為じゃないの?』
毒舌なコメンテーターがそう言った。
言われてみれば、誰もが名前を知っている俳優と、ヲタクに人気があるだけで特に取り柄のないアイドル。そう受け取ることもできないこともない。
……こういうのも、ヒエラルキーが存在するってことなのかなあ。
格差婚とかいうやつも、同じような感じかもしれない。なにを基準にしているかっていうだけで。
でも、それに対して大人は、なにも言わないんだ。
「今日はどこか行くのか?」
「学校。美化委員の掃除があるから」
「へえ、そんなこともあるんだな」
お母さんから聞いて知っていたくせに。
そう思ってても、なにも気づいていないふりをして笑って会話を続けた。なんのための会話なんだろう、これ。確認の会話なんだろうか。
毎週、休みのお父さんと顔を合わせるとこんなふうにさり気なく私の様子を聞かれて、内心めんどくさいなと思いながら笑顔を貼り付けて答えている。
これ、いつまで続くんだろう。
それが私のせいだってことはわかっているんだけど。
お父さんはともかく、お母さんはきっと、今も肩身の狭い思いをしているんだろうし、私が文句なんて言えない。
以前働いていたパートをやめてからずっと専業主婦だ。
同級生の親とスーパーで顔を合わせることがあるからか、車でしか行けない小さなスーパーで買い物をしているのを知っている。
「……学校、そろそろ行かなくちゃ」
逃げるようにそう告げて、すぐに着替えて家を出て行った。