秘色色(ひそくいろ)クーデター
ふたりとも口調は厳しく激しいけれど、その言葉が胸を打つ。それだけふたりの気持ちが込められているんだってわかる。
本音を言い合っているふたり。
今まで、いじめられっこといじめっこだったふたりが、ある意味対等にケンカしている。
浜岸先輩の口調は激しいし、傲慢だけれど……奥底にある気持ちは私と同じかもしれない。
会長の隣で、俯いていてほしくない。
初めて会ったときの、みんなに話しかけたような、背筋を伸ばして目を見つめて、語りかけてくる。そんな優しく強い雰囲気の先輩でいてほしい。
だからこそ、あの日。
私はここに踏み込んだ。
浜岸先輩だって、だから、次の日も放送部に来たんじゃないかって、思うんだ。
「どーしたの? 声すっごい響いてるよ」
場にそぐわないほどの明るい声が背後からして振り返ると、会長が苦笑をこぼしながら中に入ってきた。
「ほら、ケンカしてないで、仲良くしなきゃ。時間はないんだからつまらないことでケンカしてないでさ」
「……つまらないこと?」
ふたりの間に割って入り、ふたりの肩を掴んだ先輩の言葉がひっかかってしまって繰り返した。
小さな声だと思ったけれど、静まり返った教室ではよく響いたらしく、会長が私の方を見る。
「なに? どうしたの?」
問いかけられて、一瞬怯んでしまったけれど、ぐっと唇を噛んでから言葉を発した。
「……つまらないことじゃ、ないと思います」
「話し合いにならない口論は感情的になりすぎて、端から見たらつまらないことでしかないよ。つまらないことじゃないなら、冷静に、相手に伝えるべきだと思うんだけど」
でしょ、と言いたげに微笑んだ会長に向かって再び口を開いた。
「そうかもしれないです……でも、そうじゃないないからといって間違っているわけじゃないと、思います。それ以上に、"つまらないこと”と決めるけることは、間違ってると思います」
静かな部屋に、私の声が響く。