アリスには赤い薔薇を
猫には白兎の首を
「大丈夫」
大丈夫じゃない。
触れないで、私に。
でも猫の力には
勝てなくて。
頭を手でぽかぽか
やってもやめて
くれない。
「傷なんて
そのままで
いいんですっ」
ようやくそう
言ったころには
すでに傷はない。
腕の方は流れていた
血まで舐められた。
「………」
「本当の名前
思い出した?」
「わ、私の名前は
アリスですっ
それ以外
ありえないっ」
「違うよ
この世界に来た
【迷い人】は
みんなアリスと
いう名前を
つけられるんだ」