アリスには赤い薔薇を
猫には白兎の首を
「違う…
違う違う違う違うっ」
私はずっとアリス
として生きてきた。
みんなからアリス
アリスって呼ばれて
いた。
「そのみんなって?
君は思い出せる?」
みんな……
お母さん、お姉ちゃん
お父さん、クラスメート
「え……あ、れ?」
家族の名前も
友達の顔も頭に
浮かんでこない。
わかっている
はずなのに。
私はあの人達が
存在してると
わかっているのに。
同時にそんな人
いなかったんだと
思ってしまう。