アリスには赤い薔薇を
猫には白兎の首を
「ふぅ……」
やっとお喋りな
花たちから逃げられた。
何だか体中が痛かった。
見ると全身すり傷
だらけで、膝からは
血が滲んでいる。
傷に気がつくと
痛みは出てくるもので
この膝の傷も
その例外に当てはまり
気づいてしまってから
ズキズキと痛み出した。
「いた……」
膝の傷の部分が
やけに熱くなった。
肌に触れる
心地よい風も今は
この傷の敵だった。
アリスはその場に
しゃがみこんだ。
しゃがみこんで
これからどうしようと
考えた。
追いかけていた
白兎の姿はどこかに
消えてしまった。
アリスは抱えている
膝から流れる血を
ぺろりと舐めた。
鉄の味が口に広がる。
その独特の香りと味に
アリスは顔をしかめ
舐めたのは失敗かと
思ったけれど
鉄の味の中にちょっと
甘さを感じ何度となく
自分の血を
ぺろぺろと舐めた。