アリスには赤い薔薇を
猫には白兎の首を
白い机の上に
盛ってある赤い
さくらんぼを
ひょいと掴み
口に入れる。
「去年は
ダイヤの子たち
だったわよね?」
「は、い…」
「今年は
ハートの子たち
にしましょう
気に入ってたけど
仕方ないわ」
世話係りは
ポケットから
メモ帳を取り出し
その言葉を
書き留める。
スペードや
クラブたちでは
意味をなさない。
ダイヤやハート
でないと
赤い薔薇は
咲かない。
スペードや
クラブでは
黒い薔薇が
咲いてしまうから。
「やっぱり私の
部屋には黒より
赤が似合うと
思うの」
「えぇ
そうですね」
世話係りは
メモ帳を
しまった。
今年も……
「ハートの子たち
には私がやるわ」
だって楽しいこと
だものと声の主は
笑いながら言った。