アリスには赤い薔薇を
猫には白兎の首を
無抵抗の者たち
壊すのは簡単
「薔薇の数を
今から殖やす
ことはできて?」
さくらんぼは
次々と口の中
腹の中へと
消えていった。
「う~ん…
かなり難しい
ですね
白い薔薇なら
人手も足りる
のですが」
「足りない分は
なんとかしましょう」
出来るわよね?
と威圧的な
笑顔を見せる。
「それには
人を探さない
といけませんが」
「あら?簡単よ
今は猫とアリスが
いるんだもの
白兎よりは
捕まえやすい
でしょう」
「……」
「わかったら
出ていって頂戴
これから
一眠りするから」
世話係りは
短く返事をすると
音をたてないように
扉を閉めた。
さくらんぼで
唇のラインを
なぞる。
あのふたりの
血はどんなにか
きれいな赤だろう
ふふふと笑いながら
白いベッドで
眠りについた。