横顔の君




「そうだったんですか、良かったですね。」

次の日、私はいつものように鏡花堂に立ち寄り、そこで、昨夜のまどかのことを話した。



「気が付いたら、二時間もしゃべってたんですよ。」

「よほど、楽しかったんですね。
それにしても、LINEっていうのは便利な機能があるんですね。
僕もそろそろスマホにしないといけないかなぁ?」



照之さんは、今もガラケーを使ってる。
照之さんともLINEはしたいけど…
かかってくることもめったにないし、かけるのも少ない。
ネットはよほどの時にしか使わないし、メールのやりとりもほとんどしないって言ってるから、さすがにスマホをすすめようという気もしない。



「スマホは楽しいと言えば楽しいですが、料金も多少高いですし、使わなかったら、もったいないですよ。」

「あれば使いそうな気もするんですが、年を取ると、どうも新しいことにチャレンジするのが億劫に感じてしまうんですよね。
スマホって、なんだか難しそうですし…」

「そんなに難しくはないですよ。
要は慣れです。
あ、それに、スマホだと携帯小説とか、電子書籍を読むのも読みやすいですよ。」

「あ…そういう楽しみもあるわけですね。」

照之さんは、そう言いながら、何度も頷いた。



やっぱりいつでも照之さんが一番反応するのは、本に関すること。
本当に、本が大好きなんだ。



「……どうかしましたか?」

「あ、いえ…何も……」

思わず顔がにやけていたようだ。
照之さんのそれを悟られ、私はあわてて誤魔化した。
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