横顔の君
「紗代さん…どうかお願いです。
僕を避ける理由を教えて下さい。
そんなことも包み隠さずに教えて下さい。」

照之さんはまっすぐな目をして私にそう言った。



そう…言ってしまえばすべては終わる。
それに、これは終わらせないといけない問題だ。
逃げててどうにかなる問題じゃない。



(言わなくちゃ……!)



そう決意した時だった。



「ユキ~
いないのか~?」



レジの方から声がして、私達の居るリビングに人の入って来る気配がした。



「ユキ~…
あ、あれ?お客さん?」

「あっ!あなたは……!」



私を見てちょっとびっくりしたような顔を浮かべた人…
それは、照之さんと全く同じ顔をした…バーで見たあの人だった。
私の心臓は驚きのせいで早鐘を打ち出した。



「テル…君はいつも急に来るんだな。」

「お客さんがいるなんて思わなかったからさ。
お邪魔だったら帰るけど…もしかして、ユキの彼女?」

その人は私を見て、にやにやと笑っていた。



「今はちょっと取り込んでるんだ。
たいした用じゃないんなら、出直してくれ。」

「はいはい、わかりました。
それじゃあ、彼女さん…ごゆっくり…」

その人は、片目を瞑って手を振り、部屋を出て行った。



「……すみません、弟なんです。」

「お、弟さん?」

「ええ、双子の弟です。」

「双子……」



だから、そっくりだったんだ…



あれは、照之さんじゃなかった…
照之さんの弟さんだった…
それを私は勝手に勘違いして、照之さんを悪い人だと思って、しかも怪我までさせて……



「う、うぅ……」

あまりにも申し訳なくて、自分自身が腹立たしくて、私はもうどうして良いかわからず、泣き出していた。



「紗代さん…いきなりどうしたんです?」

照之さんの心配そうな顔を見たら、ますます申し訳ない気持ちが募って、私の涙は止まることがなかった。
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