横顔の君




「紗代さん…落ち着きましたか?」

「……はい。取り乱して本当にすみませんでした。」



子供みたいに声を上げて泣いて…
泣いて泣いて、息が苦しくなるほど泣いて…
ようやく私の涙は止まってくれた。
顔が突っ張って苦しい。
酷く見苦しい顔になってることはわかったけど、もはやどうすることも出来ない。



「さぁ、紗代さん…
お茶でも飲んで…」

「あ、ありがとうございます。」

出してもらったお茶を飲んで、なんとなく気分も落ち着いた。



「紗代さん…一体、どうなさったんですか?」

「はい……
照之さん、本当にごめんなさい!
すべて私の勘違いでした!」

私は深く頭を下げた。
それと同時に大きな涙がこぼれ落ちる。



「紗代さん、どういうことです。
頭を上げて下さい。
そして、事情を話して下さい。」

涙を指でぬぐい、私は小さく頷いた。
話さなければならない。
これまでのことを何もかも……



「照之さん…私…ずっとあなたに騙されてたって思ってました。」

「だます?
僕があなたを…?」

「は、はい……
以前、お話したと思いますが、昔の友人がこちらに遊びに来ました。
その時、駅前のバーに行ったんです。
あんな遅い時間にあの場所にいるのは、私にとって初めてのことでした。
そこで、私はあなたを見た…
モデルさん…だって、友達が言ってましたが、スタイルの良いとってもきれいな人とあなたは仲良さそうにして、何人かのグループで来られてました。
私は、もうびっくりして…
でも、その後会ったあなたはいつもと少しも変わらなかった…
だから、あれは私の見間違いだったんだって…そう思ったんです。
でも、やっぱりどこかすっきりしなかった。
どこかであなたを疑う気持ちがあった…
だから、またあのバーに行きました。
あのバーの近くで、あなたが来るんじゃないかって様子をうかがってました。
そしたら、ある日、あなたはまたやってきた。
あの綺麗な女の人と一緒に……
ものすごくショックでした。
私…また騙されてたんだって思いました。
お話しましたよね。
以前、私は、彼氏を親友に取られたこと。
そのことを私に告白する前から、彼と親友はずっと長い事付き合っていて…
でも、私はそのことに少しも気付いてなかった。
そのことが思い出されたんです。
また同じだって思ったんです。
私はまた騙されてたんだって…」

「紗代さん…それは僕じゃない。
僕は……」
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