横顔の君
「そっか~…ついにそこまでこぎつけたんだ。」

「うん、まぁね。」

次の日、まどかから電話がかかってきたから、思わず、照之さんが昨日うちに来たことを話した。



「でも、ずいぶん時間がかかったね。
彼が会いたがらなかったの?」

「ううん、反対。」

「それじゃあ、お母さんが渋ってたの?」

「そうじゃなくて…彼はお母さんに会いたがってたけど、いろいろあって、私がなかなか決心着かなかったんだ。」

「いろいろって…何があったのよ?」

いろいろなんて言ったら、誰だって聞きたくなると思う。
余計なことを言ってしまったと後悔しても、後の祭り。



「え…うん…実はね…
ほら、この間、まどかがこっちに来た時…」

「あのことがどうかしたの?」

「あの時、私、バーで具合が悪くなったよね?」

「うん、覚えてるよ。」

「あれ…実はお酒のせいじゃなかったんだ。」

「どういうこと?」

今更、こんなことを言ったら、まどかが気を悪くするかもしれないけど…
そのことを話さないと話しが前に進まない。



「あの時、モデルのなんとかいう人がいたって言ってたよね?」

「あぁ、キャリーでしょ?」

そうだ、あの時もまどかは『キャリー』って言ったんだ。



「あの人と一緒にいた人、覚えてる?」

「うん、なんか格好良い人だった。」

「あの人…彼だと思ったの。」

「えっ!どういうこと?
紗代の彼ってそんなに格好いい人なの?
って、そうじゃなくて、彼がキャリーとあんたを二股かけてたってことなの?」

「うん、そう思って、ショック受けちゃって…」

それは、今、思い出しても恥ずかしくて悔しい思い出だ。



「それで、あの時、具合が悪くなったってことなのね?」

「うん。お酒のせいにして誤魔化してごめん。
でも、その時はそう思って、とにかくものすごいショックをうけちゃってね…だけど、その後、彼に会って、やっぱりあれは私の見間違いだって思ったの。
だって、彼は少しも変わったところはなかったし、私に嘘をついてるようには思えなかったから…
とはいっても、やっぱり心の底ではまだどこか信じきれなくて、またバーの近くに行って何日か張り込んだの。
そしたら、彼がまたあのモデルさんと一緒に来て…」

「えっ!じゃあ
やっぱり二股だったの!?」
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