横顔の君
「テルもいいかげん、本気の恋をした方が良いぞ。
もういい年なんだからな。」

「おっ…ユキのセリフとは思えないこと言うなぁ…
あぁ、これが余裕ってやつか…」

輝彦さんはそう言って、にやにやしながら照之さんをみつめ、照之さんは少し頬を染めて、ぷいと顔を逸らした。



「ところで、紗代ちゃん…
僕、駅前のタワーマンションの最上階に住んでるんだ。
良かったら、ユキと一緒に遊びに来てよ。」

「良く言うな、あそこにはあんまりいないんだろ?」

「いる時はいるから。
あ、連絡先、渡しとくね。」

そう言うと、輝彦さんは胸ポケットから金色のキラキラした名刺を取り出し、私の前に差し出した。



「あ、あぁ、ありがとうございます。」

受け取って良いものかどうかって迷って照之さんを見たけれど、特に何の反応もないから、一応受け取っておいた。



「さて、と。
じゃあ、帰るとするか。
邪魔者は消えろってね。」

「何か用事でもあるのか。

「まぁね。
それじゃあ、紗代ちゃん…またね。」

「は、はい、今日はどうもありがとうございました。」

「あ……」

帰りかけた輝彦さんが、なにかを思い出したように立ち止まった。



「え?」

「……ユキのこと、よろしくね。」

「は、はいっ!」



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