横顔の君
*
「今日はこれをお願いします。」
あの日から数日経って、私はまたあの古本屋さんを訪ねた。
そして、長編ファンタジーの2巻から10巻を買った。
「面白かったでしょう?」
「はい、すっごく!
続きが読みたくてたまらなくなって…」
「好きなジャンルじゃないものにも面白いものはあるでしょう?」
「え?え、ええ、そうですね!」
袋に本を入れてくれる間、ほんの少し交わされる他愛ない会話…
だけど、それだけで私の胸は弾む。
弾み過ぎて、先日、純文学と歴史ものが好きだって言ってたことをつい忘れてた。アブナイ、アブナイ…
でも、こないだ程の緊張もなく、顔が強張ることもなかった。
他の二冊も面白かったけど、長編ファンタジーの第1巻は殊の外面白かった。
続きが読みたくてたまらなかったというのは嘘でもなんでもない、ごく率直な感想。
これはきっと最新刊まで読むのをやめられない。
「1350円になります。」
お金を払う間に、ふと傍らに伏せられたあの人の読んでる本のタイトルが見えた。
『水面』
人気お笑いコンビの一人が書いた、今、話題の小説だ。
大きな文学賞の候補にもなっている。
こんな本まで読んでるなんて、本当にこの人、雑食なんだ…そんなことを思いながら、あの人の横顔をじっとみつめる。
私は帰りに駅前の本屋さんに立ち寄り、『水面』を購入した。
ふだんだったらきっと買わない本。
芸能人の書いたものには、どうも軽いという独断に近い偏見があって、今まで買ったことはなかったのだけど、どうしてもあの人と同じ世界を共有したくて、私はその本を手に取った。
「今日はこれをお願いします。」
あの日から数日経って、私はまたあの古本屋さんを訪ねた。
そして、長編ファンタジーの2巻から10巻を買った。
「面白かったでしょう?」
「はい、すっごく!
続きが読みたくてたまらなくなって…」
「好きなジャンルじゃないものにも面白いものはあるでしょう?」
「え?え、ええ、そうですね!」
袋に本を入れてくれる間、ほんの少し交わされる他愛ない会話…
だけど、それだけで私の胸は弾む。
弾み過ぎて、先日、純文学と歴史ものが好きだって言ってたことをつい忘れてた。アブナイ、アブナイ…
でも、こないだ程の緊張もなく、顔が強張ることもなかった。
他の二冊も面白かったけど、長編ファンタジーの第1巻は殊の外面白かった。
続きが読みたくてたまらなかったというのは嘘でもなんでもない、ごく率直な感想。
これはきっと最新刊まで読むのをやめられない。
「1350円になります。」
お金を払う間に、ふと傍らに伏せられたあの人の読んでる本のタイトルが見えた。
『水面』
人気お笑いコンビの一人が書いた、今、話題の小説だ。
大きな文学賞の候補にもなっている。
こんな本まで読んでるなんて、本当にこの人、雑食なんだ…そんなことを思いながら、あの人の横顔をじっとみつめる。
私は帰りに駅前の本屋さんに立ち寄り、『水面』を購入した。
ふだんだったらきっと買わない本。
芸能人の書いたものには、どうも軽いという独断に近い偏見があって、今まで買ったことはなかったのだけど、どうしてもあの人と同じ世界を共有したくて、私はその本を手に取った。