横顔の君
「あっ、こんな所に公園があったんですね。」
「多分、もう一本向こう側の道を通られたんでしょう?
でも、こっちの方が、ほら…良い雰囲気でしょう?
それにここを突っ切るとけっこう早い。」
「本当ですね。
あ、池まであるんですね。」
公園の中には小さな池があって、水鳥っぽいものが優雅に池を泳いでいた。
「ええ、僕はたまにここで寄り道をして帰るんですよ。
鳥を見ながらぼーっとしたりして…」
「そうなんですか…
本当にここはのんびり出来そうですね。」
水鳥を横目で眺めながら、私達はその公園を突っ切った。
「このあたりは、あっちより車の往来も少ないから、通りやすいでしょう?」
「はい、おっしゃる通りです。
あっちは大きなトラックが良く通るし、ちょっと危険だなって思ってたんです。」
ただ道を教えてもらってるだけなのに、それでも心はうきうきと弾んだ。
そう、あの人と一緒にいることが…そのことが幸せ過ぎて…
「あ、あの…鏡花堂さん…」
私はあの人に話し掛ける時、無意識に書店の名前を口にしていた。
すると、あの人はくすっと笑った。
「僕、隠岐と言います。
隠岐照之。」
「えっ!?」
そのことが幸いして、私はあの人の名前を訊ねることなく知ることが出来た。
「おき…てるゆき…さん。
良いお名前ですね。
どんな漢字を書かれるんですか?」
「隠岐は島根県の方の隠岐の島のおき、照之は照らすにしんにょう…」
「しんにょう?」
「ほら、ひらがなの『え』に似たのがあるでしょう?
『の』とも読むあれですよ。」
「あぁ…!」
素敵…名は体を表すって言葉があるけど、まさにそう。
漢字をイメージしたら、本当にそう思えた。
「わ、私は吉村紗代って言います。
なんだか、平凡ですね。」
「そんなことないですよ。
さよは『悔恨』の主人公のさよと同じ漢字ですか?」
「え…?
ど、どうでしたっけ?
私は、糸へんに少ないと、代表の代です。」
「あぁ、では、さが違いますね。」
「……そうでしたっけ?」
私は曖昧に笑って、その話題を誤魔化した。
「多分、もう一本向こう側の道を通られたんでしょう?
でも、こっちの方が、ほら…良い雰囲気でしょう?
それにここを突っ切るとけっこう早い。」
「本当ですね。
あ、池まであるんですね。」
公園の中には小さな池があって、水鳥っぽいものが優雅に池を泳いでいた。
「ええ、僕はたまにここで寄り道をして帰るんですよ。
鳥を見ながらぼーっとしたりして…」
「そうなんですか…
本当にここはのんびり出来そうですね。」
水鳥を横目で眺めながら、私達はその公園を突っ切った。
「このあたりは、あっちより車の往来も少ないから、通りやすいでしょう?」
「はい、おっしゃる通りです。
あっちは大きなトラックが良く通るし、ちょっと危険だなって思ってたんです。」
ただ道を教えてもらってるだけなのに、それでも心はうきうきと弾んだ。
そう、あの人と一緒にいることが…そのことが幸せ過ぎて…
「あ、あの…鏡花堂さん…」
私はあの人に話し掛ける時、無意識に書店の名前を口にしていた。
すると、あの人はくすっと笑った。
「僕、隠岐と言います。
隠岐照之。」
「えっ!?」
そのことが幸いして、私はあの人の名前を訊ねることなく知ることが出来た。
「おき…てるゆき…さん。
良いお名前ですね。
どんな漢字を書かれるんですか?」
「隠岐は島根県の方の隠岐の島のおき、照之は照らすにしんにょう…」
「しんにょう?」
「ほら、ひらがなの『え』に似たのがあるでしょう?
『の』とも読むあれですよ。」
「あぁ…!」
素敵…名は体を表すって言葉があるけど、まさにそう。
漢字をイメージしたら、本当にそう思えた。
「わ、私は吉村紗代って言います。
なんだか、平凡ですね。」
「そんなことないですよ。
さよは『悔恨』の主人公のさよと同じ漢字ですか?」
「え…?
ど、どうでしたっけ?
私は、糸へんに少ないと、代表の代です。」
「あぁ、では、さが違いますね。」
「……そうでしたっけ?」
私は曖昧に笑って、その話題を誤魔化した。