横顔の君
(当たって砕けろだ!)
ある日、私は、またいつものように照之さんを待ち伏せした。
まるで、罠にかかる獲物みたいに、照之さんは何の疑問もなくいつもの市場に現れて…
そこで、私はひさしぶりに抹茶あんみつを食べませんか?と誘ってみた。
すると、照之さんは、また例の子供みたいな無邪気な顔になって、ごく素直に私の誘いを受けてくれた。
「本当においしいですね。
ここみたいにおいしい抹茶あんみつはなかなかありませんよね。」
「そうですね。
本当においしいです。」
そんなことを話しながらも、私の頭の中は違うことでいっぱいになっていた。
そう、私は、今日、決死の想いでここに来た。
バッグの中には、映画のチケットが入ってる。
照之さんを映画に誘うつもりで来たのだ。
それは、イギリスの有名な文豪の一生を描いたもの…
本当ならロマンチックな恋愛ものを見たいところだけど、きっと、照之さんはそういうのは好きじゃないだろう。
でも、作家の一生を描いたものなら…本好きの照之さんも興味を持ってくれるんじゃないかと思ったのだ。
「それにしても、最近は雨が多いですよね。
まぁ、雨が嫌いってわけではないんですが、家の中はじめじめするし、やっぱり鬱陶しいですよね。」
「そ、そうですね。本当に鬱陶しいですね。」
映画のことで頭がいっぱいで、なかなか会話にも身が入らない。
早く言わなきゃって思えば思うほど、そのきっかけがつかめなくて、緊張で口の中がからからになってしまった。
私はお冷をぐびぐびと飲み干した。
(言わなきゃ…早く、言わなきゃ!)
「……じゃ、そろそろ行きますか。」
「あ…あのっ!」
つい気合いが入り過ぎて、大きな声を出してしまい、照之さんは少し驚いたように私をみつめた。
「……何か?」
「え…えっと、その……」
どうしよう!?言いかけたからここで止めるわけにはいかないけど、でも、やっぱり迷惑?
こんなことしたら、却って嫌われてしまうかな?
そう思うと、こんな土壇場に来て、また迷いが大きくなった。
ある日、私は、またいつものように照之さんを待ち伏せした。
まるで、罠にかかる獲物みたいに、照之さんは何の疑問もなくいつもの市場に現れて…
そこで、私はひさしぶりに抹茶あんみつを食べませんか?と誘ってみた。
すると、照之さんは、また例の子供みたいな無邪気な顔になって、ごく素直に私の誘いを受けてくれた。
「本当においしいですね。
ここみたいにおいしい抹茶あんみつはなかなかありませんよね。」
「そうですね。
本当においしいです。」
そんなことを話しながらも、私の頭の中は違うことでいっぱいになっていた。
そう、私は、今日、決死の想いでここに来た。
バッグの中には、映画のチケットが入ってる。
照之さんを映画に誘うつもりで来たのだ。
それは、イギリスの有名な文豪の一生を描いたもの…
本当ならロマンチックな恋愛ものを見たいところだけど、きっと、照之さんはそういうのは好きじゃないだろう。
でも、作家の一生を描いたものなら…本好きの照之さんも興味を持ってくれるんじゃないかと思ったのだ。
「それにしても、最近は雨が多いですよね。
まぁ、雨が嫌いってわけではないんですが、家の中はじめじめするし、やっぱり鬱陶しいですよね。」
「そ、そうですね。本当に鬱陶しいですね。」
映画のことで頭がいっぱいで、なかなか会話にも身が入らない。
早く言わなきゃって思えば思うほど、そのきっかけがつかめなくて、緊張で口の中がからからになってしまった。
私はお冷をぐびぐびと飲み干した。
(言わなきゃ…早く、言わなきゃ!)
「……じゃ、そろそろ行きますか。」
「あ…あのっ!」
つい気合いが入り過ぎて、大きな声を出してしまい、照之さんは少し驚いたように私をみつめた。
「……何か?」
「え…えっと、その……」
どうしよう!?言いかけたからここで止めるわけにはいかないけど、でも、やっぱり迷惑?
こんなことしたら、却って嫌われてしまうかな?
そう思うと、こんな土壇場に来て、また迷いが大きくなった。