横顔の君
「あ、吉村さん、デザートはどうしますか?」

「え…あ…あぁ、そうですね。」

私は大きなメニュー表に手を伸ばした。



あぁ、びっくりした。
私、おかしな顔をしてなかっただろうか?と、心配しながら、何気ない素振りでデザートのページに目を落とす。
だけど、まださっきのドキドキから覚めてないから、何を見ても頭を素通りしてしまう。



「あの…隠岐さんはどれになさいますか?」

「そうですね…
この、抹茶と栗のパフェが気になってるんですが…」

「良いですね。
じゃあ、私もそれにしようかな?」

食べるものも同じにして、デザートも同じだなんてちょっとどうかなとは思ったけど、今の私には思考力がなかったから仕方ない。



当の照之さんは特にそんなことは気にも留めていない風で、抹茶と栗のパフェを注文してくれた。



「さっきのハンバーグ、思った以上にボリュームがあったけど、やっぱり甘いものは別腹ですね。」

「本当にそうですね。
私も正直、食べられるかなって思ってたんですが、ぺろっといけました。」



他愛ない会話を交わし、私達はファミレスを出た。
自分で払うっていうか、映画に誘ったのは私だから、食事代くらいは出そうと思ってたのに、照之さんが払ってくれた。
今までの甘味屋さんもずっとおごってもらってるのに、なんて申し訳ない…
古本屋さんもそんなに儲かってるようには思えないから、なおさらにそう思った。
でも、それももしかしたら照之さんの男のメンツみたいなものかもしれないから、無理に払うっていうのもどうかと思って…



そんなことを少し気にしているうちにも、映画の時間が近付いて来て、私達は映画館に向かった。


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