横顔の君
「……同じ色…ですね。」

「不思議ですね。
あそこにはいろいろな色があったのに、たまたま選んだのが同じ色だったなんて…
本当はカーディガンにしようかと思ったんですよ。
でも、僕はセンスが良くないから、ストールの方が無難かなって思い直したんです。
カーディガンにしてたら、完全なペアルックになるところでしたね。」

「そ、そうですね。」


私はそれでも良かったのだけど…でも、そんなことは言えない。



「でも、考えてみれば、カーディガンとストールでもペアルックみたいなものですね、なんだかすみません。」

「あ、謝ることなんてありません。
その色を選んだ私が悪いんですから。」

「そうじゃありません。
僕がこれを選んだから…」

「いえ、私のせいです、ごめんなさい!」

そんなことを言い合った後、照之さんは突然肩を震わせた。
それを見ていたら、私もついつられて吹き出してしまった。



「どっちが悪いわけでもないのに、つまらないことでお互いに謝って…なんだかおかしいですよね。」

「本当にそうですね。」

しかも、お互いにこっそりとプレゼントを買ってたなんて…
ただの偶然…だけど、そんな偶然がなんだかとっても照れくさくて…そして、嬉しかった。



「でも、本当にどうしましょうね…
お互い、これを身に付ける時は申告し合うことにでもしますか?」

「え?どうしてですか?」

「だって…たまたま同じ日にお互いがこれを身に付けてたら、本当にペアルックだと思われてしまいますよ。」

「わ、私…別にそんなこと……」

照之さんは、なぜだか言葉に詰まる私の顔をじっと見てた。



「吉村さん…帰りにこのカーディガンに合うインナーとパンツを選んで下さい。」

「は、はい。」



ってことは、照之さんはこのカーディガンを着てくれるつもりなんだ…
そう思ったら、胸の中が嬉しさで満たされた。
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