横顔の君
*
(……あれ?)
いつものように、ファンタジー小説の続きを買って来て、読んでいた時のことだった。
私は、本の間に、四つ折りにされた小さなメモをみつけた。
『いつも本当にどうもありがとうございます。
あなたの優しいお心遣いには、いつも感謝しています。』
大人っぽい達筆な文字で、そう書かれていた。
鼓動が急に速くなる。
これは、照之さんから私へあてたもの?
それとも、誰かがこの本を売った時に、すでに挟み込まれていたもの?
もし、後者だとしたら、そんなものについて何か言うのは恥ずかしい。
だけど、これがもしも私にあてたものだったら、何も言わないのはおかしい。
どうしよう?
そのことが気になって、気になって…
ますます悩んで、たまらなくなって、私は勇気を振り絞って、ある賭けに出ることにした。
「吉村さん、こんばんは。
もう読み終えたんですか?」
「い、いえ、まだです。
今日は実は本を売りに来ました。」
そう言って、私は、以前買った『水面』を照之さんの前に差し出した。
私はこの本にメモを挟んだ。
『こちらこそ、いつもどうもありがとうございます。
いつも楽しい想いをさせていただいて、あなたにはとても癒されています。』
告白こそ出来なかったけど、これだけ書くのも私には大変なことだった。
「では、560円で買い取らせていただきます。」
「あ、ありがとうございます!」
私は本を受け取ると、一目散に店を飛び出した。
メモを早く見つけてほしいようなみつけないでいてほしいような…
そんな複雑な想いを胸に、私は自転車をこぎ続けた。
(……あれ?)
いつものように、ファンタジー小説の続きを買って来て、読んでいた時のことだった。
私は、本の間に、四つ折りにされた小さなメモをみつけた。
『いつも本当にどうもありがとうございます。
あなたの優しいお心遣いには、いつも感謝しています。』
大人っぽい達筆な文字で、そう書かれていた。
鼓動が急に速くなる。
これは、照之さんから私へあてたもの?
それとも、誰かがこの本を売った時に、すでに挟み込まれていたもの?
もし、後者だとしたら、そんなものについて何か言うのは恥ずかしい。
だけど、これがもしも私にあてたものだったら、何も言わないのはおかしい。
どうしよう?
そのことが気になって、気になって…
ますます悩んで、たまらなくなって、私は勇気を振り絞って、ある賭けに出ることにした。
「吉村さん、こんばんは。
もう読み終えたんですか?」
「い、いえ、まだです。
今日は実は本を売りに来ました。」
そう言って、私は、以前買った『水面』を照之さんの前に差し出した。
私はこの本にメモを挟んだ。
『こちらこそ、いつもどうもありがとうございます。
いつも楽しい想いをさせていただいて、あなたにはとても癒されています。』
告白こそ出来なかったけど、これだけ書くのも私には大変なことだった。
「では、560円で買い取らせていただきます。」
「あ、ありがとうございます!」
私は本を受け取ると、一目散に店を飛び出した。
メモを早く見つけてほしいようなみつけないでいてほしいような…
そんな複雑な想いを胸に、私は自転車をこぎ続けた。