横顔の君




(あぁぁ…どうしよう…)



ファンタジー小説は読み切ってしまった。
いつもならまた続きを買いに行く頃合い…
だけど、もしも、あのメモを見られてたら…



いや、見られるために書いたんだから、見られてて良いんだけど、また返事が来る?
それとも……



そんなことを考えると、足がすくんでなかなか鏡花堂へ行くことが出来なかった。



でも、長い間行かなかったら、きっとおかしいと思われる…
どうしよう…?



考えて…悩んで…
私はようやくお店に行くことを決断した。



(自然に…考えることなんてないんだから…リラックス、リラックス!)



自分にそんなことを言い聞かせ、お店の前で、大きな深呼吸をして、私は無理矢理平静を装った。



いつもの本を10冊持って、レジに行く…



「吉村さん…こんばんは。」

「あ、こんばんは。
また、いつものをお願いします。」

私は声の震えを押さえつつ、なにげないふりで本をレジに置いた。



もしかしたら、この中にまたメモが入ってるかもしれない。
そう思うと、また心臓が飛び跳ねる…
だけど、照之さんの様子はまったくいつもと変わりはない。
ってことは、やっぱり、あれは照之さんではなく、あの本を売った人のメッセージだったのか?
緊張しすぎて、お会計を待つ間にも、足が震える…


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