横顔の君




「すごい人ですね。」

「本当にすごいですね。」

予想していたとはいえ、パーク内はどこも行列だらけだった。



今日の照之さんは、先日私がプレゼントしたカーディガンと、私が選んだコーディネート…
思った通り、とても良く似合ってる。
私もワンピースに、いただいたストールを掛けて来た。
傍目には、私達はどんな風に見えているのだろう?
仲の良い恋人同士に見えてるだろうか?



「隠岐さんは、こういう所は苦手なのかと思ってました。」

私がそう言うと、照之さんは苦い笑みを浮かべた。



「まいったな、吉村さんはなんでもお見通しなんですね。」

「え…じゃあ、なんで…?」

「吉村さんは…というより、若い女性はこういう所が好きでしょう?」

「それじゃあ、私のために無理をして…」

「無理するって程ではないですよ。
こういうところは本当に嫌いじゃないです。
ただ、並ぶのが面倒っていうか…」

「そうだったんですか…」



私のためを想ってくれたってことだけで、嬉しかった。
確かに、テーマパークは嫌いじゃないけど、アトラクションに乗ったりしなくても、こうしてパーク内を見て歩くだけでけっこう楽しい。
結局のところ、照之さんと一緒だとなんでも楽しいっていうのが本音だ。



「私も並ぶのはあんまり好きじゃないんです。
ゆっくりあちこち見て回りましょう。」

「そうですね。
じゃあ、まずはあそこで何か飲みませんか?」

私達は、飲み物を買い、ベンチに腰を降ろした。



「良い雰囲気ですよね。
家族連れが多くて和みますね。」

「そうですね。
あ…あの…カーディガン…とてもお似合いです。」

「そうですか?ありがとうございます。
これも、吉村さんのおかげです。
吉村さんに見立ててもらったら間違いないし、安心して人前に出られるようになりました。」

「照之さん、大げさ…あっ!」

気が緩んでつい照之さんと呼んでしまった。



「良かったら、今後もそう呼んで下さい。
僕も、紗代さんって呼ばせていただきますから…」

「あ…はい。」

私は小さく頷いた。


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