横顔の君
「紗代?」

「あぁ、まどか…久しぶり!」

「ひさしぶり!
最後に話したのっていつだったろうね?」

「え…いつだったっけ?」

「多分、紗代が向こうの大学に行って…それからしばらくして…」

「あ、思い出した!
たかしくんだっけ?
まどか、ぞっこんだった彼氏がいたじゃない。
あの頃だよ。
電話してもうざがられるし、なんかもう彼氏しか見えないって感じでちょっと気まずくなって…」

「あはは…ごめんね。
若気の至りってやつよ。
本当、あの頃、ほとんどの女友達に見放されてしまって…自業自得ってやつだよねぇ…」

ちょっと話しただけで、長い間のブランクが埋まった気がした。
少し鼻にかかった声…おおらかな笑い声…あの頃と少しも変わらない。
まるで、つい何日かぶりに電話をしてるような錯覚に陥ってしまう。



「ねぇ、今もたかし君と付き合ってるの?」

「まさか…とっくに別れましたとさ。」

「そっか、でも、彼氏はいるんだよね?」

「まぁね。」

まどかはけっこう派手な顔立ちで、社交的だし、昔からよくモテた。
だから、今だって彼氏がいないなんて思えなかった。



「紗代はどうなの?」

「え?うん、まぁ…付き合ってる人はいるよ。」

「どんな人…?」

「うん…三つ年上で、穏やかな人…」

あんまり詳しく話すのもどうかなって思って、私はそんな曖昧な答え方をした。



「そっか~…穏やかな人か~
なんか、紗代と合いそうだね。
もしかして、結婚なんかも考えてるの?」

「うん…ま、一応は考えてるかな…」

「へぇ~…そうなんだ。
幸せなんだね!」

「うん、まぁね。」

「のろけやがって、こいつぅ~!」


まどかの冗談に、二人で笑った。
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