嫌いじゃない。
あれ。芹沢、ちょっと脚のテンポ遅れてない?



それは見間違いなんかじゃなくて、徐々に矢澤と離れていく。



ちょっと…芹沢何やってんのよ。



私のためなら、なんでも出来ちゃうんじゃなかったの?



「……芹沢」


気づけばそっと声に出していた。



たった一瞬こっちを向いて、芹沢がニコッと笑顔を見せる。



次の瞬間には、芹沢がまたスピードを上げて追い上げていた。



ゴールの線を先に踏んだのは……








矢澤だった。



「や……った!」



ゼェゼェしながらも、やったよ!と言いながらこっちに手を振ってくる。



あんなチャラ男なんかとデートするより、矢澤みたいに落ち着いてて気の使える人とデートする方が、よっぽど良いはずなのに。


なんで私、喜べないんだろう。
< 41 / 69 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop